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ALANET 社長ブログ

京都唯一のスーツメーカーの二代目社長の
ファッションと映画の今昔歴
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ちょっとノスタルジー
  先日、東京神田にある薮蕎麦が火事でほとんど全焼したというニュースをテレビでみました。この薮蕎麦は私が大好きな蕎麦屋の一軒です。それとまた、この神田と言う場所は私にとって特別な思い出のある場所なのです。

         もう相当昔の話です。

大学受験で一人で東京へやってきて、なぜか泊まったのが、この薮蕎麦の隣にあった「萬代屋」と言う旅館でした。 「となりにあった」という事は今はもうないという事です。
 その「萬代屋」と言う旅館は、かなり古くからあった旅館の様で、どうやら戦火も免れたようで、まるで江戸時代にタイムスリップしたようなたたずまいで、その頃、私は18歳で知人の紹介とは言え、またいくら東京の事は一切わからない地方から来た田舎者?とはいえ、えらいところへ来たなあと思いました。
 新幹線で京都からはるばるやってきていくら受験とは言え、わざわざこんな旅館に泊まらなくても、東京にはいっぱいホテルがあるのに、、、、と思いましたが、その頃、大変お世話になっていた方の紹介なので仕方ありませんでした。
そのお世話になってなっていた方は、この「萬代屋」と薮蕎麦のほん近くで商売されていた方です。
その方は、いわゆる生粋の江戸っ子で代々神田にお住いになり、この蕎麦屋も旅館も同じ町内で、その頃京都で大変懇意にしていた人(私の父親)の息子を2〜3日面倒みるのには、一番近くの、しかも心安い旅館がいいだろうという配慮だったと思います。
 そんな事が、縁のきっかけで、この方とは、ずーっと長いお付き合いをする事に成るのですが、その話はまた別の機会にしたいと思います。

 話をそのレトロな旅館に戻しましょう。はっきりとは覚えてないのですが、確か、夕方に着いたと思います。そこの旅館の仲居さんみたいな人に先に風呂に入れと言われ案内されるままに風呂に入りました。廊下はミシミシと京都でいう「うぐいすばり」です。何回も言うようにタイムスリップしたような風呂で、何か落ちつきません。

     「まあ、いいか!!」

取りあえず少々疲れもあり、私は「烏の行水」で有名なのですが、いつもよりちょっとゆっくり目に湯船につかり、ほっとした気分になりました。
 まだ夕方だったのと、さほど人気がないらしく、そこの旅館の客は私一人だったようです。
慣れない場所に一人来て、しかも明日は大事な受験ですから、ベストコンデションで臨まなくてはなりませんから、食事を済ませ早く寝ようと少々イラだっていたように思います。
いつも、滅多に来たことがない「浴衣」のような、寝間着が脱衣場に置いてありましたが、こんなものを着たら、きっと落ちついて寝られないと思い持参したパジャマを着て部屋に戻ったら、もうちゃんと夕食の準備が出来ていたのです。
 早くさっさと食べて寝たらいいと思い箸を付けたのですが、どれも味付けが「辛い」のです。
生まれてこの方、ずうっと京都で生活してきている私は、薄味に慣れており「おつゆ」も「煮物」も大変辛いのです。東京へ来る前から、話は聞いていたのですが、想像以上にからいのです。
仕方なく「おかず」は程々にして、漬物とゴハンで簡単に済ませました。
取りあえず食事を済ませ、お茶を飲んで、ボーっとしていたら、そこのおかみさんらしき「おばさん」が入ってこられ、もう機関銃のように、いっぱいしゃべられるのです。
はっきりとは覚えてないのですが、東京大空襲の話や、新婚旅行は京都へ行ったとか、私にはどうでもいい話ばかりカン高い大きい声で、しかも早口の江戸弁でまくしたてられました。

    それはそれはものすごい迫力でした。

 初めは愛想よく話を聞いていたのですが、だんだん辛くなり、切の良い所で、思い切って言いました。「奥さん、私は明日受験に行きますので早く寝ようと思っています。」
すると、おかみさんは「そうでしたね。すみません。気が付きませんでした」「早速お布団をひきましょう」 そう言われて押入れから手早くお布団を出され、きちんと引いてくださいました。
 その間もいっぱいしゃべっておられましたが、何をおっしゃっていたかは全く覚えておりません。

その萬代屋を拠点に確か3日間ほど東京にいたと思います。

受験も無事完了し、帰りの新幹線のホームで立ち食いそばを食べましたが、そのダシがまた思いっ切りからかったです。

 それから20年ほどして、たまたま、ちょっと東京へ行く用事があって、その萬代屋の事を思い出し、また神田の薮蕎麦でそばも食べたかったので、駅を降りて歩いていったのですが景色がすっかり変わっていました。
今から思えば、その時はバブルの絶頂期で、そのレトロな萬代屋は大変大きく豪華なビジネスホテルになっていました。きっとあのしっかりしたおかみさんが女社長として大改革をされたのでしょう。

 薮蕎麦でそばを食べ、隣の変身した萬代屋の前でポツンと眺めていると何か狐につままれたような気分でした。

     ちょうど「雨月物語」のようです。

 今やその薮蕎麦も火事で焼失してしまったのですが、きっとすぐ再建されるでしょう。

    ちょっとしたノスタルジーです。





















































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